- 綾 佐藤
- 4 日前
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「訪日外国人向け広告(インバウンド広告)」とは、国内における主なインバウンドマーケティングの手法です。
近年、益々インバウンド需要が高まってきていることから、訪日外国人向け広告の必要性を実感している方も多いのではないでしょうか。
この記事では、海外向けマーケティングに20年以上携わってきた専門家の視点から、訪日外国人向け広告の基本的な内容や、対策すべきポイントをご紹介します。
訪日外国人向け広告の基礎知識
訪日外国人向け広告におけるカスタマージャーニー別の具体例
訪日外国人向け広告制作時のポイントや注意点
さらに、広告作りに必要な心構えや事前に知っておくべき対策ポイントについても解説します。
これからインバウンドマーケティングに取り組もうとお考えの方は、ぜひご参考ください。
【インバウンド対策】訪日外国人向け広告とは
訪日外国人向け広告の仕組みを理解する前に、まずは基礎的な知識からみていきましょう。
インバウンド広告が注目されるようになった背景や目的、広告の特徴や主な種類について詳しく紹介します。
注目されている背景
訪日外国人向け広告が注目されるようになった背景には、以下の理由があります。
海外旅行者(訪日外国人)が世界的に増加
質の高い体験を求める消費者が増加
テクノロジーの進化
個人旅行者の増加
若年層旅行者のスマホ・SNSの積極的利用
日本は2010年代から政府を筆頭にインバウンドを推進してきましたが、パンデミックの影響により一時的に大きく需要が下がっていました。しかし、近年では円安の影響もあり、需要は回復傾向です。
上記の背景から、個々のニーズに合わせてパーソナライズしたアプローチが必要とされており、デジタル広告やSNSを活用したマーケティング戦略など、さまざまな戦略が注目されています。
訪日外国人向け広告(インバウンド広告)の目的
訪日外国人向け広告は、訪日中の外国人観光客のニーズを満たし、問題解決に役立てることで訪日体験を向上させることが目的です。
現地での観光・サービスの利用、商品の購入につなげる
滞在中の満足度を高めて情報を拡散してもらい、知名度UP・新規顧客獲得につなげる
主な目的は国内における消費の向上ですが、さらなる需要増加へつなげる狙いもあります。
そのため、SNSやWeb上を通して日本での体験を拡散してもらうことも意識した上で、広告を打つことも大切です。
訪日外国人向け広告(インバウンド広告)の特徴
訪日外国人向け広告は、見込み客の行動に沿ったアプローチができるのが特徴です。
効果的に広告を運用するなら、旅行者の文化的背景や来日の目的に沿った内容が求められるでしょう。
見込み顧客の行動(カスタマージャーニー)は、主に訪日前・訪日中・訪日後に分けられます。
この各タイミングに応じた最適な広告を実施するためには、デジタルメディアの活用が不可欠です。
SNS・SEM・動画広告など、さまざまな媒体からアプローチし、訪日体験全体を向上させます。
また、位置情報データを活用することで、来店や訪問の効果測定も可能です。
訪日外国人向け広告(インバウンド広告)の主な種類
訪日外国人向け広告の主な種類は以下の通りです。
Web広告
プリントメディア広告
イベントスポンサーシップ
インフルエンサーマーケティング
インタラクティブ広告
地元事業との連携広告
訪日外国人向けの広告は、種類ごとに発信できる情報量や拡散力が異なります。
たとえば、海外における自社の認知度が一定量ある場合は、リーチ数の高い広告手法が最適です。
一方、認知度が低い場合は、「まず知ってもらう」とこから始めなければなりません。
情報量が多く、理解を深めやすい広告手法を採用することを意識しましょう。
海外における認知度が低い場合は、以下のインバウンド広告がおすすめです。
記事広告
動画配信
海外のリアルイベント など
各手法の詳しい内容については、以下で解説しています。
訪日外国人向け広告の基本の仕組み
訪日外国人向けの広告は、世界24ヵ国のモバイルデバイスにおける位置情報データを活用しています。
スマホのIDは、ホームロケーションごとに区別できるようになっているため、各国のIDが日本国内に訪れたタイミングで広告を配信できるのです。
また、該当IDが国内のどこに滞在しているかを判別し、TPOに応じた広告配信をすることもできます。
もちろん、国籍別に配信対象は選択でき、元々国内に居住している外国人を除外することも可能です。
さらに、訪日外国人には3つのカスタマージャーニーがあり、それぞれニーズを満たす広告の内容が異なる点にも留意する必要があります。
訪日前(事前準備) | 訪日中(滞在中) | 訪日後(帰国後) | |
ターゲット | 来日を計画している外国人 来日可能性が高い見込み顧客 | 旅行中の訪日外国人 | 訪日歴のある外国人 |
広告の目的 | 日本への誘致 | 現地における観光案内 | リピート向上や購買意欲の向上 |
訪日外国人向け広告の具体的な活用法
先述したように、インバウンド広告はカスタマージャーニーの各段階における的確なアプローチが求められます。ここからは、訪日外国人向け広告の具体的な戦略や活用法についてみていきましょう。
【訪日前】国内観光地への誘致と情報提供
訪日前の見込み顧客には、日本の観光地・文化に興味が出るような内容の広告を発信し、来日意欲を高めるアプローチが有効です。
国内から海外に向けてのアプローチであるため、デジタル手法によるインバウンドマーケティングがメインになります。
リスティング広告(検索エンジン広告)
SNS広告
インフルエンサーマーケティング
動画広告・インタラクティブ広告
ディスプレイネットワーク広告
イベントスポンサーシップ など
上記の広告やマーケティング手法を活用することで、おすすめの観光地へ誘致したり、来日意欲を促したりします。
【訪日中】観光地やイベント情報の提供
訪日中の外国人に対しては、インバウンド広告で滞在体験を高めるようなサポートをおこないます。
プリントメディア広告(パンフレットなど)
モバイルアプリを活用した位置情報広告
デジタルサイネージによる多言語情報提供
地元企業とのタイアップ など
広告の具体的な内容は、近隣のお得な観光情報や興味関心を引くイベント、近隣の観光スポットやレストラン紹介などです。
たとえば、モバイルアプリによる位置情報を活用するケースでは、ユーザーが特定の観光地へ近づいた際に、割引クーポンや特別体験の広告を配信することができます。
また、駅や繁華街などに設置されたデジタルサイネージを活用し、リアルタイムで多言語の観光情報を提供したり、緊急時の連絡事項を表示させたりすることも可能です。
【訪日後】リピート向上・購買意欲向上
訪日後のインバウンド広告は、主に訪日履歴のある外国人旅行客へのアプローチです。
訪日履歴の有無は、位置情報データに記録されている緯度経度を参照することで確認できます。
訪日後の広告は、越境ECにおける集客を目的としており、周囲に情報を広めてもらいリピート率を上げるのが狙いです。主に以下の手法を使って、自社ECサイトへの誘導を促します。
Web広告
口コミ
SNS など
「時間が無くて買えなかった」「美味しかったから家族にも食べさせてあげたい」というニーズは、「明確な商品名がわからない」「自国語や国内サイトではヒットしない」という壁にぶつかりがちです。
そのため、訪日後の外国人向け広告では、日本で知った料理やお店の情報を広告から発見できるようにすることが大切になります。
また、新規顧客を呼び込むため、旅行中の国内観光地やサービスなどをSNSやブログ、口コミサイトなどに投稿させ、情報を拡散してもらうことも重要です。
旅行中はスマートフォンの通信に制限があったり、忙しく疲れていたりして、口コミやレビューの投稿をする余裕がある人は少ないでしょう。
帰国後の余裕のあるタイミングを見計らい、口コミを促すような広告を提示することで、レビューがもらえる確率が高くなります。
訪日外国人向け広告制作時のポイント4つ
訪日外国人向けの広告制作時のポイントは4つあります。
明確なターゲティング設定
メッセージの簡潔さと視覚的要素の活用
ターゲット国含む複数言語による情報提供
現地のローカル情報
明確なターゲティング設定
Web広告における効果的なターゲティング手法は以下の通りです。
行動ターゲティング | ユーザーの行動データを参照した広告の配信 (Webサイト・クリックした広告・購入履歴・検索履歴など) |
---|---|
リターゲティング | Webサイトの訪問履歴があり、購入や予約成立に至らなかったユーザーがターゲット(特別割引や限定オファーなど) |
ジオターゲティング | ユーザーの地理情報に基づく広告の配信 |
デバイス最適化 | 特に日本滞在中の外国人向け広告はモバイルファーストを意識 |
さらに、訪日外国人向けの広告には、以下を意識した明確なターゲットオーディエンスの特定も必要になります。
国籍
言語
文化的背景
旅行の動機
興味のある分野 など
メッセージの簡潔さと視覚的要素の活用
簡潔で視覚的に魅力的な広告は、多国籍な観光客への訴求力を強化し、効果的な集客につながります。
言語や文化の違いがある中で、伝えたい内容を一目で理解してもらうには、短く明確な言葉を使うことを意識し、複雑な表現や専門用語は可能な限り避けるべきでしょう。
また、視覚的要素は、言葉の壁を越えて情報を伝える手段として非常に有効です。
鮮やかな色彩や高品質な写真、分かりやすいレイアウトなどは、広告の注目度と記憶定着率を高めてくれます。
ターゲット国含む複数言語による情報提供
訪日外国人向けの広告を制作する際は、ターゲット国に対応した複数言語での情報提供が重要です。
英語は国際共通語として大いに活用できますが、中国語や韓国語など、実際の訪問者数が多い国の言語にも対応することで、訴求力が大幅に高まります。
たとえば、観光地や店舗の紹介に英語・中国語表記を付け加えるだけでも、多くの旅行者にとって情報の理解が深まり、訪問の動機づけにつながるでしょう。
多言語対応は信頼感の向上にも貢献するので、効果的な集客が可能になります。
現地のローカル情報
訪日外国人向け広告に現地のローカル情報を盛り込むことで、旅行者の関心をさらに高める効果が期待できます。
たとえば、地域の祭りや伝統的な食文化、地元でしか味わえない体験などを紹介することで、ガイドブックにはない「本物の日本」に触れる魅力的を伝えられるでしょう。
こうした情報は観光体験の質を高めるだけでなく、広告を単なる宣伝ではない価値ある提案として印象づけることにつながります。
地元企業や商業施設などと連携することができれば、さらに説得力ある内容になるでしょう。
訪日外国人向け広告の課題と対策
訪日外国人向け広告に取り組む前には、以下の課題があることを把握し、適切な対策を取ることが大切です。
的確なターゲティング
文化的背景への配慮
コスト管理
効果測定
的確なターゲティング
訪日外国人向けの広告における難しさは、何と言っても的確なターゲティングでしょう。
不特定多数の訪日外国人向けに広告を打っても、メッセージ性のない薄い内容になってしまいます。
訪日外国人向けに効果的な広告を打つためには、詳細な市場調査とデータ分析が必須です。
そのため、具体的な顧客セグメント特定に時間をかけることをおすすめします。
場合によっては、専門家やマーケターのサポートを受けるのもいいでしょう。
文化的背景への配慮
異文化間での誤解や感受性の不足による悪影響は、企業のイメージを下げる可能性もあります。
広告作成時は、ターゲットオーディエンスに否定的な影響を与えないよう配慮することが大切です。
文化的感受性を高めるには、ターゲット市場への理解を深めることが一番の近道です。
自社だけで判断するのは難しいかと思いますので、ネイティブのマーケターやコンサルタントにチェックしてもらうことをおすすめします。
コスト管理
多言語・多文化対応が必須とされる訪日外国人向け広告は、運用コストも高くなりがちです。
予算の関係上、広告の規模や範囲が限定的になってしまう可能性も考えられるでしょう。
そのため、コスト効率最大化のためにも、デジタルチャネルの活用を検討することをおすすめします。
また効果測定の結果によって予算を柔軟に調整し、効果的なものにアプローチを絞るのも有効です。
効果測定
訪日外国人向け広告はROIの評価が困難であり、効果測定の精度に課題があります。
対策としては、具体的なKPIをあらかじめ設定し、Google Analyticsや位置情報連動ツールなどの分析ツールを活用することが大切です。
広告接触数
Web遷移率
来店数
購買率 など
上記を設定しておくことで、キャンペーンの成果を可視化しやすくなるため、効果的な戦略の見直しや改善にもつながります。定量的なデータに基づく運用が成功のカギとなるでしょう。